はじめてのOSCP

OSCP学習を始める前に必要な前提知識とは?ペンテスト初心者が押さえるべきポイント

Tags: OSCP, ペンテスト, 学習方法, 前提知識, 初心者

はじめに

Web開発の経験があり、OSやネットワークの基本的な知識はお持ちでも、「ペネトレーションテスト(ペンテスト)」や「セキュリティ攻撃」についてはまだ学習を始めたばかり、あるいはこれから始めようとお考えの皆様にとって、OSCPは非常に魅力的な目標でしょう。しかし、「いざOSCPの学習を始めよう」と思ったときに、「自分に足りない知識は何だろうか?」「何から準備すれば良いのだろうか?」と疑問に感じる方もいらっしゃるかもしれません。

OSCP(Offensive Security Certified Professional)の学習コースであるPWK(Penetration Testing with Kali Linux)や、その後の試験は実践的な内容が中心です。体系的な基礎からみっちり教えてくれるというよりは、「既知の技術」を組み合わせて課題を解決していくスタイルです。そのため、事前にいくつかの技術分野に関する「前提知識」を身につけておくことが、学習効率を大きく向上させ、挫折を防ぐ鍵となります。

この記事では、Web開発などの技術的バックグラウンドをお持ちのペンテスト初心者の方々が、OSCP学習をスムーズに開始するために必要な前提知識について解説します。ご自身の現状と比較しながら、学習計画の参考にしていただければ幸いです。

OSCP学習に必要な主な前提知識

OSCPの学習では、様々な攻撃手法やツール、技術的な概念を学び、実践します。これらを効果的に理解し、使いこなすためには、いくつかの土台となる知識が必要です。

OSの基礎知識(特にLinux)

OSCPの学習および試験では、主にLinuxベースの環境(特にKali Linux)を使用します。そのため、Linuxの基本的な操作や概念に関する知識は必須と言えます。

Web開発でLinuxサーバーを扱った経験がある方は、これらの多くの知識をお持ちかと思います。その経験はOSCP学習において大きなアドバンテージとなります。ただし、ペンテスト特有のファイルパスや設定ファイル(/etc配下など)へのアクセス、権限昇格の手法に関わる部分など、さらに深く理解が必要になる領域もあります。

ネットワークの基礎知識

ペンテストは、標的となるシステムと攻撃者の間で行われるネットワーク通信を介して行われます。したがって、ネットワークに関する基礎知識は非常に重要です。

Web開発においては、サーバー・クライアント間の通信やAPI連携などでネットワークの基礎を利用されているはずです。OSCPでは、これらの知識に加え、パケットキャプチャ(Wiresharkなど)で通信内容を解析したり、特定のポートやサービスに対してどのように攻撃が行われるのかといった、より実践的かつ攻撃者視点での理解が求められます。

プログラミング/スクリプトの基礎知識

OSCPの学習では、既存のツールを利用するだけでなく、場合によっては簡単なスクリプトを作成したり、既存のエクスプロイトコードを理解・修正したりする場面があります。主にPythonやBashスクリプトの知識があると有利です。

Web開発のご経験がある方は、何らかのプログラミング言語に慣れているはずです。その学習経験や、ロジックを組み立てる思考力は、PythonやBashを習得する上で大きなアドバンテージとなります。Pythonは多くのペンテストツールで利用されているため、特に学習しておくと良いでしょう。

Linuxコマンドの基本操作

OSCPの学習環境であるKali LinuxはCUI(Character User Interface)での操作が中心となります。GUIツールも提供されていますが、効率的な作業や、ツールの詳細な挙動を理解するためには、コマンドライン操作に慣れることが不可欠です。

ls, cd, cp, mv, rm, mkdir, grep, find, ssh, scp, netstat, ifconfig (or ip addr)など、基本的なファイル操作、プロセス管理、ネットワーク関連のコマンドは習得しておく必要があります。

Web開発でLinuxサーバーの運用やデプロイに関わった経験がある方は、これらの基本的なコマンド操作に慣れていることでしょう。さらに、パイプ(|)やリダイレクト(>, >>)を使ったコマンドの組み合わせ、バックグラウンド実行(&)、ジョブ管理(jobs, fg, bg)といった少し進んだ操作を覚えておくと、学習中の演習が格段にスムーズになります。

ペンテストの基本的な考え方(攻撃者視点)

これまでの開発経験では、システムを「安全に」「効率的に」構築・運用する視点が中心だったかと思います。OSCP学習では、これに加えて「攻撃者視点」を持つことが非常に重要になります。

ツールはあくまで手段であり、その背後にある「なぜその脆弱性が存在するのか」「なぜその攻撃が成功するのか」という原理を理解することが、OSCPでは求められます。この攻撃者視点を身につけることが、これまでの開発者視点との最も大きな違いであり、OSCP学習の最初のハードルの一つとなるかもしれません。まずは、代表的な攻撃手法について、技術的な仕組みを含めて概観することから始めてみるのが良いでしょう。

Web開発経験者が有利な点と補強すべき点

Web開発の経験は、OSCP学習において非常に有利に働きます。

一方で、Web開発経験があっても補強が必要な領域もあります。

どのように前提知識を習得するか

OSCP学習を始める前にこれらの前提知識を習得するためには、以下のような方法が考えられます。

全てを完璧にしてからOSCP学習に進む必要はありません。まずは基本的な部分を押さえ、学習を進める中で必要に応じて立ち戻り、知識を補強していくという進め方も可能です。重要なのは、「分からないことが出てきたときに、自分で調べ、理解するための基礎力」を身につけておくことです。

まとめ

OSCPは挑戦しがいのある認定資格であり、その学習を通じて実践的なペンテストスキルを習得できます。Web開発のご経験で培われた技術力は、OSCP学習の強力な土台となります。

しかし、OSCPの学習コースや試験は、特定の前提知識があることを前提に進められる部分が少なくありません。特に、Linuxの基本操作、ネットワークの基礎、スクリプト読解・修正能力、そして何よりも「攻撃者視点」は、学習効率に大きく影響します。

OSCP学習をスムーズに開始し、着実に進めていくためには、この記事で挙げたような前提知識について、ご自身の現状を把握し、不足していると感じる部分から計画的に補強していくことをお勧めします。焦る必要はありません。しっかりと準備を進め、OSCPという目標に向かって第一歩を踏み出してください。